第41話
圭太とは、別々のクラスになった。
中学校の昇降口に貼られているクラス表を見て、そうだと知った時の圭太ときたら、俺でも分かるほど大げさなくらいがっくりと両肩を落としてうなだれた。
「中学でもずっと同じクラスだと思ってたのに…」
「今生の別れじゃねえんだから。別っつっても、クラスは隣同士なんだし」
「何か困った事があったら、すぐに知らせてね!いつでも駆けつけるから!」
さすがに、その気持ちだけもらう事にした。
あれは、小学六年の時に行った修学旅行の事だったか。班別行動の際、班長だった圭太や他のちびのっぺらぼうと一緒に並んで歩いていたつもりだったんだが、ふとした拍子に俺一人だけが人混みに流されてはぐれてしまった事がある。
だが、さして困るような事はなかった。十分ほど経って、圭太の黄色い防犯ワッペンを目印に合流する事ができた訳だが、その時の圭太ときたら怒ってるんだか泣いてるんだかよく分からない声色で俺にこう叫んだ。
「何で大声出して僕を呼んでくれないの!?困った時はちゃんと声に出して言ってくれないと分かんないんだからさ!」
本当、恥ずかしい奴だなと今思い出してもその結論に達する。
その結論を悟られたくなくて、俺は圭太の頭に向かってひょいっと右腕を伸ばし、そこを手のひらでクシャクシャにしてやる。ていねいにセットしてきたであろう髪型があっという間にダメになった。
「ちょっ…垣谷君!?」
「はいはい、分かった分かった。何かあったら呼ぶよ、お助けマン」
「絶対だよ!宿題の丸写し以外なら、全部助けてあげるから!」
誰がそんな事を校舎の廊下で暴露していいと言った!?
通りすがりののっぺらぼうの何人かからくすくすと漏れ出る笑い声と、背後でぶんぶんと腕を振りながら俺の背中を見送る圭太の視線を感じながら、俺は教室へと入っていった。
あいつと出会う四十五分前の事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます