第24話
「垣谷君、おはよー!」
「今日の体育、一緒に走ろうね」
「あっ!ダメだよ、給食のニンジン残したら~」
「垣谷君、途中まで一緒に帰ろうよ」
…まあ、一番ひどい言い方をするとしたら、まさにストーカーって感じだった。
出席番号が並んでいたから、当然ニブチンの方針に従ってあれこれと同じ班になったり、一緒に行動する事が多かったが、それを抜きにしても俺の後をちょこちょことついてきてた。
圭太の甲高い声はすっかり覚えてしまったから、すぐに「またあいつだ」と分かる。そして振り返れば、縁とレンズが分厚いメガネがふよふよ浮かんでこちらに近づいてくるように見えるので、俺はそのたびに頭が痛くなった。
そんな日常が続いた、ある日の朝の事だった。
いつものように、誰にもあいさつしないで教室の中に入ると、またいつものように圭太の甲高い声が聞こえてきた…が。
「垣谷君、おは…うわあっ!」
最後まで言い切る事ができずに、圭太は教室の真ん中で転んだ。別のちびのっぺらぼうに後ろから突き飛ばされて。
「圭太、お前いい加減にしろよな」
それに続いて、威嚇するような声も聞こえてきた。この声は、確か…クラスで一番力が強いとか自慢してた…。
「あいつのせいで、俺達迷惑してんだぞ」
そのちびのっぺらぼうが言った。
「何でもかんでも出席番号順って決められてさ、何をやるのもワンパターンで飽きた!給食の時さえ好きな奴と一緒に食えないとかありえないし!」
「そうだよ。だから、あいつと仲良くするなって何度も言ったのに…!」
別のちびのっぺらぼうの声もする。俺はため息をついた。
何なんだよ、こいつら。ニブチンに何を言っても暖簾に腕押しだからって、そこでどうして圭太に当たるのかまるで意味が分からない。文句があるなら、直接俺に言えばいいのに。
「…ほんと、バカじゃね?」
心で思っていたつもりが、ついポロリと口から漏れ出てしまった。
それをしまったと思うつもりはなかったが、瞬時にちびのっぺらぼう達の怒気がこっちに向かってきたのが分かって、ほんのわずかに身構えてしまった。
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