第23話

ニブチンは、とにかく神経質でなおかつ頑固だった。


「こうするのは垣谷の為」

「垣谷がクラスで孤立しない為」

「垣谷が少しでも早く皆の事を覚える為」


 二言目にはこういった決まり文句をつらつらと並べ立て、皆を出席番号順で行動させる事を強いた。


 何かの課題で班別に発表する時も。遠足で少し遠出する時も。運動会や音楽会で整列する時も、全部「俺のせい」にして出席番号順というものにこだわった。


 当然、クラスメイト達は事あるごとに反発したし、時には保護者まで出てくる事もあった。それでもニブチンは頑として譲らず、逆に反発した奴やその親をなじるような事を言った。


「何てひどい事を言うんだ…!?クラスメイトがつらい思いをしているというのに、それを無視するのか!?」

「あなた方には垣谷君の苦労が分からないのですか!?僕は皆と同様、彼にも楽しい学校生活を送ってほしいだけなんです!」


 はっきり言って、余計なお世話だった。


 別にニブチンが出席番号順にこだわらなくても、長い時間をかけてゆっくりと観察する事ができれば、ちびのっぺらぼう達の顔は分からなくても覚える事はできる。会話だって、奴らがムダに俺を避けさえしなければ普通にかわす事もできるんだ。


 きっと、チョークが一・二年の時の俺の様子を変なふうに伝えたんだ。物覚えの悪い子だったから、友達が一人もいなくて本ばかり読んでいたとか何とか…。


 結果として、三年のクラスメイト達も俺を徐々に遠巻きにするようになった。


 ただ、ニブチンにそれを知られると厄介なのも分かっていたから、表面上は俺と仲良くしているふり、不満だなんて思っていないふりをしていた。三年生にもなると、そういうずる賢さも出てくるってもんだ。


 そんな奴らの中、本当に俺と仲良くなろうとする圭太は必死だった。でもその言動を、俺はすぐに信じる事ができないでいた。

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