第20話
圭太と再会したのは、それから二年後。三年生に進級して、初めてのクラス替えがあった時だった。
あの時、気持ち悪さに拍車がかかっていた俺は、不器用ながらも一生懸命に背中を撫でてくれていた圭太の事をいつものように観察する余裕なんてなかった。
結局、式の途中で退席する事になり、俺の様子に気付いて駆け寄ってきてくれた両親、そして養護教諭だと名乗ったのっぺらぼうと一緒に保健室へ移動したのだが、圭太はよっぽど俺が心配だったのか、
「ぼくもいく!なにかおてつだいする~!」
と、連れられていく俺の服の裾を掴んでなかなか離そうとしなかった。俺が覚えていたのは、その甲高くて必死な声だけだった。
そんなスタートだったせいか、一・二年生の時の学校生活はあまり楽しいとは思えずに終わった。
俺が保健室で着替えなどをしている間、チョークはクラスメイトと保護者に俺の頭の不具合の事を説明したそうだが、その説明はやたら雑だったというか、ひどく端的に終わらせたようで、きちんと理解できた奴はほぼいなかった。
『要するに、物覚えがものすごく悪い子』
『関わると面倒な子』
きっと保護者の大半はそんなふうに捉えたと思う。
保護者がそう思えば、それは子供にも何となく伝わるというもので、俺が遅れて一年三組の教室に入った時には、そこは楽しみにしていた場所ではなく、何とも居心地の悪い環境へと様変わりしていた。
それからまもなく、クラスメイト達は俺を遠巻きにするようになった。
会話は朝の「おはよう」と帰りの「バイバイ」程度の最小限に留め、極力俺との関わりを避ける奴もいれば、俺の頭の不具合を面白がって、逆にいじめに近い形でからかってくる奴もいた。
でも、俺には「何をしてくるのが」「どののっぺらぼうなのか」が分からなかったので、ひとまず全部無視した。反発したところで意味なかったし、チョークはまったく当てにならなかったし。
一人で静かに過ごすのが一番だと悟った俺は、二年間図書室の本や教科書をぼんやりと眺めて過ごしていった。
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