第60話

すると。


 おぎゃああ! おぎゃあああ!


 江嶋の目が大きく見開く。


 確かに聞こえた。これは赤ん坊の泣き声だ。


 江嶋は急いで残骸に手をかけると、順番にそれらを取り除き始める。やや大きいもの、重いもの、固いものとあって爪が剥がれそうになったが、一切気にせず続けた。


 どれだけ時間が経った事だろう。ようやく大半の残骸が取り除かれたところで、江嶋は奇跡を見つけた。


 ぽっかりと穴が開いたようにできていたその空間に、二人の赤ん坊がいた。


 赤ん坊達は何も身に着けておらず、一人は男の子。もう一人は女の子だ。


 どちらも『五体満足』であり、身体のどこにも『傷一つ見当たらなかった』。


「あぁ……神よ、感謝します!」


 江嶋は思わず赤ん坊達を掬い上げるように抱き上げ、嗚咽を漏らしながら叫ぶ。


 そんな彼の腕の中で、赤ん坊達は幸せそうに笑った。






(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パーフェクトベビー 井関和美 @kazumiiseki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ