第50話
「見つけた、王の器の片割れと生け贄だ……」
窓の向こうからだというのに、直接耳元に響く呪いの声に、正也も槙村も両耳を塞いでその場にうずくまる。
その直後、分厚い窓ガラスはあっという間に彼らの手によって砕かれ、一斉に部屋へとなだれ込んできた。
「う……わあっ!」
「くっ、来るな! 誰が生け贄か!」
なだれ込んできたいくつもの黒い腕が、正也と槙村に襲いかかる。
抵抗を試みようとする正也だったが、百八十センチの大柄な身体や力は何の役にも立たず、わずか数秒で動けなくなった。
「は、離せ、離せぇ! 私は関係ない! 私はただ、己の手術の腕を……ぎゃあっ……!」
黒い腕に囲まれてしまって何も見えなかったが、正也の耳には槙村の最期の言葉がしっかりと聞こえていた。そして、バギィッと何かが折れたかのようなものすごい音も……。
「あ、あぁっ……」
恐怖が一瞬でこの場を支配した。のしかかってくるたくさんの腕の力に圧迫されて、正也の意識は徐々に薄くなっていく。
正也のポケットからこぼれ落ちたヒビだらけのスマホの液晶画面は、ちょうど日付が変わった時刻を表示していた。
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