第48話

「これが、その時交わされた契約書のコピーです。奴らに渡されました……」


 そう言って、江嶋は胸元から一枚の紙切れを取り出し、智彦に差し出した。


 乱暴な手つきで契約書を受け取ると、智彦はすぐさま内容を確認する。それはあまりにもおぞましい契約だった。






(一)生き返らせた娘は、十六歳の誕生日に我らが王の為の器として献上する事。


(二)契約の日、娘の片割れを含めた四人の男の生け贄を用意し、共に献上する事。


(三)この契約の反故は認められない。必ず執行される旨を忘れず、その日を待つ事。契約を守らなかった場合は、死をもって償う事。






「何だ、これは! これでは結局、綾奈は十六歳で……それどころか、正也まで!」

「すみません、紫藤さん……。私があんな所に静枝さんを連れ出したせいで」

「静枝は、この事は……?」

「今は綾奈さんが生き返ってくれた事で頭がいっぱいで、全く理解できていないと思われます。しかし、時間が経って冷静になれば、自分の行いがどのようなものであったか、徐々に自覚できるものかと……」


 二人の視線の先には、双子を大きめのベビーベッドに並べて寝かしつけようとしている幸せそうな静枝の姿があった。


「はい、正也。妹の綾奈よ。あなたはお兄ちゃんなんだから、妹をしっかり守ってね?」


 正也の隣にそっと置くと、生まれてきた時と同様、綾奈はまだ座っていない首をもじもじと動かして、兄にそっと寄り添った。

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