第33話

「見つけた、見つけた、見つけた……」



 いったい、何十人いる事だろう。


 何度も同じ言葉を繰り返すその者達は、全身真っ黒なフルレングスローブを身に纏い、フードを深々と被っていた。


 うつむき加減で立っている為、フードがもたらす影具合により彼らの表情を窺い知る事はできなかったが、それがかえって不気味さを醸し出している。本来見えるべき顔の所に、ぽっかりと穴がくり抜かれているかのような錯覚を覚えた。


「……何だよ、お前ら!」


 無意識に、正也は綾奈を自分の背中の向こうに隠した。ステンドグラスの雨にやられたのか、今は背中の痛みが特に強い。Yシャツが裂けているかもしれないと思った。


 そんな背中に、綾奈の両腕がそっと添えられた。カタカタと小刻みに震えているのが、わずかな振動ではっきりと伝わってくる。


 正也が、もう一度言った。


「答えろよ、お前らいったい何者だ!?」


 正也のその言葉に大きく息を飲んだのは、彼のすぐ隣に立つ智彦だった。先ほどの雨にやられたのだろう、頬には幾筋もの生々しい切り傷が刻み込まれている。だが、その痛みを感じまいとしているのか、彼はぎゅうっと歯をくいしばって耐えていた。


 そんな智彦を視界の端に捉えた江嶋は、十六年間ずっと抱き続けていた激しい後悔の念を、さらに大きなものへと変えた。


(私のせいだ。あの日、私が余計な事を言ってしまったから……。私が静枝さんをあんな場所に連れていったばかりに……!)


 江嶋は、自分の足元より少し離れた地面をちらりと見やった。


 そこには教会を訪れる人々に少しでも安らぎを与えようと、長い時間、彼が丹精込めて作った花壇の数々がある。


 それらの土を均す為に用意していた大きめのシャベルを掴むと、そのままフルレングスローブの集団に向かって振り被った。


「皆さん、逃げるんです! ここは私が!」


 声を大に、江嶋が叫んだ。

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