第16話

「見つけた……」




 同時刻。


 ベッドタウンを臨む小高い丘陵より、紫藤家のある方角を見つめている『何者か』の視線があった。


 それは、一つや二つではない。


 始めは夜の闇に点々と浮かぶ数少ないものだったのに、そのうちの誰かがこう呟くたびに、どんどん不気味に増えていく。




「見つけた、見つけた」




 ざわり、ざわり。




「見つけた、見つけた、ついに見つけた。さあ、契約の時だ」




 ざわり、ざわり、ざわ……。


 ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ……!!




 まるで同一の意思を共有しているかのように増え続けていく彼らの視線は、紫藤家の方角から決して離れようとしなかった。

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