第55話

『7月23日


今日は父さんの所には行かず、放課後、図書室に向かう。

大山さんが来てなかったものだから、いつもみたいに「山月記」を手にして待つ。この本がないと緊張しちゃうなんて、全く我ながら情けない。


大山さんが来てくれた時は、ものすごくホッとした。これで友達の作り方が聞けるって。僕も、やっと一皮むけるかもしれないって思った。


大山さんは、不機嫌そうな顔で僕を見てた。ちょっと怖かったけど、僕は勇気を振り絞って、答えを聞いた。


そしたら、大山さんが言ってくれた。

「一言おしゃべりすれば?」って。そしたら、友達なんだって。



この時僕は、心の底から嬉しくなった。


だって、たったそれだけでいいのなら、僕にはもう友達がいたんだ。目の前にいる大山さんって友達が!

これまで大山さんは、何度もしつこく話しかけてきた僕に、きちんと答えてくれてた。それって、僕を友達だって思ってくれてたからだよね?

嬉しい、嬉しい、嬉しい!

そんな気持ちが思いっきり湧き上がっちゃって、僕はついつい言っちゃったんだ。

「僕と大山さんは、友達なんだ」って!




そしたら、

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