第51話
『7月14日
今日、僕は一日の目標って奴を立てた。
それは、大山さんに謝る事だ。
昨日の放課後、僕がうまく話せなかったせいで、あれから大山さんは図書室を追い出された。
すぐに謝ろうとしたんだけど、僕の口は本当に自分勝手だ。余計な事はスラスラ出てくるのに、肝心な言葉はつっかえてしまうなんて…。
いつ謝ろうか、何て声をかけようか。
今日はそればかり考えて、大山さんと話すタイミングを計ってたんだけど、一日中、彼女はこっちを振り向く事すらなくって。まあ、当然と言えば当然なんだけどさ…。
仕方ないから、図書室で待ち伏せした。
思った通り、大山さんは来てくれた。それにホッとして、やっと声をかけてみたんだけど…、やっぱりな展開が始まっちゃって。
どう見ても、大山さんは僕を嫌ってる。僕に対して怒ってる。
そんなふうに見られる態度を取った僕が一番悪いんだから、そこをどうこう言うつもりはなくて。もっと大事な事を、僕は大山さんから聞き出したくてたまらなかった。
本当は、僕は「山月記」の主人公よりも、大山さんの方をうらやましいと思う。
彼女には、友達を幸せにする才能がある。
いつも教室で見せてもらってるけど、大山さんは瀬田さんや他の人達と一緒にいる時、必ず楽しそうに笑ってる。そしたら、そんな大山さんの笑顔を見て、皆も真似するみたいに笑うんだ。あったかい雰囲気になるんだ。
一回だけ、僕も鏡の前で笑顔の練習をしてみたんだけど、どうしても大山さんみたいに素敵な笑顔にならない。自分でも分かるくらいに気持ち悪かった。
だから、聞きたかった。その才能を分けてほしかった。
どうすれば友達が作れるのか、その方法を教えてほしかった。
でも、結果的に、僕のその思いは大山さんを困惑させてしまっただけだった…。』
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