第47話

『4月31日


今日、僕はとんでもなく大きな失敗をした。

今日の現国は、好きな短編小説を読んできて、その読書感想文を発表するという内容だった。

久しぶりに声を出すって事に加えて、僕の前に読んでいた三崎君の読書感想文がものすごく上手だったから、僕は今までにないくらい緊張してしまった。

これをきっかけに、皆と仲良くならなくちゃ。でも、僕の一番大好きな小説「山月記」の面白さをうまく皆に伝えられるかな。噛んじゃったらどうしようって。

それがダダ漏れだったのかな。先生に言われて、僕が「山月記です」って答えたら、教室中から笑い声が聞こえてきた。


今考えると、本当に下らない。

今まで誰とも話さなかった僕が、初めて口をきいた最初の言葉が「山月記です」なんだから、ちょっと笑われるのは仕方ないじゃないか。人間が虎になるなんて、本当ならありえないんだし。

でも、この時の僕は、何だかものすごくバカにされたような気がして、つい口を滑らせてしまった。言わなくてもいいひどい言葉を。



それだけじゃ飽き足りなかったのか、現国の後の体育の時間でも、ぼくはまた失敗した。

男子と女子とで別れてソフトボールをやってたんだけど、女子の順番になったから入れ替わろうってなった時、確か大山さんって名前の女子が転びそうになったのを見た。

この子は、いつも体育を見学している。きっと、身体が弱いか何かで運動ができないんだろうな。

だから、無理せずに休んだ方がいいって事を言いたかったんだけど…僕の口は、最低だった。

今なら、ひどい言い方をしたって分かるよ。それなのに、どうしてあの時すぐにそれに思い至らなかったんだろう…。



きっと、今日の事で僕のクラスの立ち位置は完全に決まってしまったと思う。

クラスの皆、ごめん。うまく言えなくてごめん。


大山さん。ひどい事を言って、ごめん。



…日記で謝ったって、しょうがないのに。

いつか、きちんと謝りたい。』

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