第42話
「さっきの話なんだけど…。菊池先生が、人を殺したっていうのは」
「ああ。さっきも少し話したけど、本当だよ。俺と、俺の上司の伊原さんって人の目の前で…元奥さんを刺し殺した。止められなくて、ごめん」
「……」
「それどころか菊池さんは、この約二週間で亡くなった五人の元生徒達も、自分が殺した事にしてくれって言って聞かないんだ」
あたしは、反射的に息を飲み込んだ。
何で、どうして!?
元奥さんって、高校時代に噂で聞いたあの奥さんの事でしょ?菊池先生に離婚を切り出した上に、そのままゴミみたいに捨てたっていう…。
そんな人を殺したってだけでもいい加減にしてほしいのに、どうして菊池先生は逢坂達の事まで自分の責任にしようとしてるの!?
まあ、その五件の時のアリバイは完全に証明されてるから、それらでの起訴はまず無理なんだけどね、なんて中村さんは言ってるけど、菊池先生の事だ。きっといつまで経っても、「あの五人も私が殺しました」とか言い続けるに違いない。
一度は本気で好きになった人の事だし、それ以前に私は菊池先生の生徒だからね。そんな事くらい、簡単に分かるよ。
だからこそ、納得がいかない。やってもいない事まで菊池先生が責任を取るなんて、どう考えてもおかしすぎる。この一連の事が、何もかもおかしすぎる。
「中村さん」
あたしは、ここでようやく中村さんの顔を振り向いた。ぎょっと肩を震わした中村さんは、もうさっきまでの刑事の顔をしていなくて、年相応のお兄さんって感じになっていた。
「な、何?」
「今、『その五件の時のアリバイは』って言ったよね?だったら、逢坂達を死なせた奴の目星はついてるって事?犯人は菊池先生じゃなくて、別にいるって事がもう分かってるんじゃないの?」
そう言ってやったら、案の定、中村さんは一気に顔色が変わった。おまけに、急に落ち着きを亡くして、きょろきょろとあたりに視線を泳がせる。
よし、あたしってなかなか推理力あるじゃん。逢坂達を殺した犯人は別にいるんだ。そいつを捕まえてもらえば、もう菊池先生が必要以上に罪の意識に苛む事なんて…。
あたしがそう思った時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます