第31話
次の日の放課後も、あたしはレポートを作る為に図書室にいた。
昨日、妹尾に大声をあげてしまったあたしは、あれからすぐに図書委員に追い出された。「静かにできないなら出て行って下さい!」なんて気持ちの悪い嫌味を言われながら。
図書室で騒いだのは認めるし悪かったとは思うけど、どうしてあたしだけ追い出される訳?原因作った妹尾は無罪放免なの?
あたしが図書委員に追い出されていくのを見て、最初は何か言いたげにしていたけど、すぐに机の上の『山月記』を取り戻してホッとしている❝あいつ❞の顔がちらっと見えたら、もう無性にムカついて。
そのムカつきのせいで、一日一緒にいる恭子の気分まで壊させる訳にはいかなかったから、朝から❝あいつ❞の方を向くまいと最大限の努力をしてきたっていうのに――。
「ここ、いいかな?」
あたしのすぐ目の前でそう言って、さっさとそこの席に腰かける妹尾。こいつの神経がマジで信じられなかった。
(…何で?何なのこいつ!今日一日のあたしの努力を全部返しなさいよ!!)
あたしは、図書室の受付カウンターをちらりと見た。幸い、今日の担当の図書委員は昨日の人じゃない。もっとおとなしめで気弱そうな人だ。あれなら少しくらい大きな声を出したところで、すぐに注意なんかできっこないかも。
そう思ったあたしは、相変わらず『山月記』のページにじいっと見入っている妹尾をにらみつけながら言った。
「どういうつもり?」
「…何が?」
実にさらっとした言い方で、妹尾が答える。うん、間違いない。この空気野郎には、間違いなく人にケンカを売る才能が完璧なくらいに備わっている。
あたしは持っていた本とシャーペンを机の上に置いてから、さらに言ってやった。ちなみに今日は本を間違えなかった。ある有名なバレーボール元日本代表選手が書いた『バレーボールの軌跡』ってタイトルだもん。
「席なら、他にもいっぱいあるでしょ」
あたしは自分の後ろにたくさん並んでいる机や椅子を右手でずいっと指差してやる。妹尾は『山月記』のページからゆっくりと顔を上げると、そのままぐるりと辺りを見渡した。
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