第24話
「逢坂と徳井君は…?まだ来ていないんですか?」
「いや、逢坂はもう来てるよ。徳井がまだなもので、外まで迎えに出た。きっと入れ違いになったんだろう」
「そうですか、じゃあここで待っていれば会えますね」
「そうだな。先に、三崎にも挨拶しなさい。三崎も久しぶりだから、きっと喜ぶだろう」
「はい…」
ゆっくりと大広間の中を進んでいって、あたしは三崎君の棺の前に立った。そこで島本はようやくあたしに気付いて、涙と鼻水まみれの顔を持ち上げながらこっちを見てきた。
「ぐっ…てめ、大山!来るのっ、おせーんだよっ…うぅっ…!皆、皆はもう来たってのに…トクも恭子もおせー!!」
「徳井君はもうすぐ来るわよ。恭子は…仕方ないでしょ、仕事なんだから」
「ううっ、くっそ…!」
「静かにしてよ、焼香するんだから」
棺のさらに奥には、三崎君の大きな遺影が飾られてあった。
どこかで見たような気がすると思ってたけど、少ししてあたしはその遺影が卒業アルバムから選んだものだと思い出す事ができた。
K県立美里第一高校三年一組のページにある集合写真。菊池先生を中心に、あたし達二十七人の生徒がぐるりと取り囲むようにして撮ったあの写真だ。
あたしはあの時、恭子と一緒に後ろの方に並んじゃったんだっけ。恭子があんまり前だと恥ずかしいだのなんだのって言うから…。
それに対して、逢坂と島本は菊池先生の少し斜め前で大はしゃぎしてたっけ。身体の大きかった徳井君はあたし達のすぐ隣。小西は…確か前列の一番左端だった。
そして、ちょっと融通が利かないくらいの真面目ぶりで勉強の虫だった三崎君は、菊池先生のすぐ隣だった。いつもは表情が硬くて、逢坂達といる時も口元をちょっと持ち上げるくらいだった彼が…卒業を前に満面の笑みを浮かべている。そんな集合写真の彼の姿が、遺影に使われていた。
この笑顔の三崎君を選んだ時のご両親の思いはどれだけのものだったんだろう。弔問してくれた人達に三崎君を会わせられない代わりに、とでも思ったのか。それとも、本当はこんなに笑える三崎君を覚えていてほしいと思ったのか。
どっちにしても、もう生きている三崎君には会えない。❝あいつ❞と同じだ。突然、いなくなっちゃった…。
そう思うと、もうたまんなくなって…あたしは他の女の人達と同じように、その場で大声で泣いた。逢坂が徳井君と、徳井君のお嫁さんになるっていうおなかの大きい女の子を連れて戻ってくるまで。
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