第22話
†
最後にお葬式に参列したのは…確か、小学二~三年生くらいだったかな。遠い親戚のおじさん(名前も知らない、顔もうっすら覚えてるだけ)が何かの病気で亡くなった時以来だと思う。もちろん、レディース仕様の喪服を着るのなんて、これが初めてだった。
あたしがお母さんからの連絡を受けて三日目。司法解剖が終わった三崎君の遺体が警察から帰ってきたという事で、その日の午後五時に彼の通夜が営まれる事となった。
着慣れない喪服の準備に少し手間取って、あたしが三崎君の家の前に辿り着いたのは午後五時半を回った頃だった。
すでに家の周りはたくさんの弔問客でごった返していて、生前の三崎君の交友関係の広さや深さがそのまま出ているって感じだ。特に高校時代は女子に絶大な人気を博していたから、あたしと入れ違いに焼香を終わらせ出てくる女の人の大半は、人目も気にしないでおいおいと大声で泣き続けていた。
あたしだって、悲しくない訳じゃなかった。これで「二人目」なんだから。また、クラスメイトが死んだんだから。
ねえ、こんな事ってある?どうして?何でこんな事になってんの?何で三崎君が殺されなくっちゃいけないの…?
棺の中に横たわっているっていう三崎君の顔を見たいと思った。でなきゃ、とても信じられなくて。❝あいつ❞の時だって「死んだ」と聞かされただけでお葬式にも参列できなかったんだから、今度こそきちんと確認して、現実を受け入れたいと思った。
だけど、三崎君の棺が安置されているという大広間に向かう短い廊下の途中で、知らないおばさん達とすれ違った時、それは絶対に無理なんだと分かった。
「本当にお気の毒よねえ…一人息子をあんなひどい形で亡くされて。奥様が気丈に振る舞っているのが、こちらもよけいに心痛むわ」
「何でも、遺体の損傷が尋常でないほどひどいらしくて…お顔も見れないありさまらしいわ。だからお子さん連れの方が見えられないのかしらねぇ」
そんなにひどいんだ。そんなになるまで痛めつけられたっていうの、三崎君は…。
あたしは、三崎君を殺した犯人って奴がたまらなく憎らしくなった。何でそこまでやったんだって。決して殺していいって訳じゃないけど、何もそんな残酷なやり方を選ばなくてもいいじゃんって。そんな、最期の最期まで苦しむような殺し方をしなくてもいいじゃんかって…!
ヤバい、あたしも大きな声で泣きたくなってきた。目に涙が浮かんで、視界もぼんやりしてくるし…。
持ってきたバッグから慌ててハンカチを取り出し、目元を少し強めに抑える。そのまま大広間への襖をくぐり抜けた時、そこには懐かしい数人が三崎君の棺に寄り添っていた。
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