第21話

次の日、突然けたたましく鳴り響いたスマホの着信メロディによって、超絶的に最悪の気分で目が覚めた。


 進学の為に実家を出て、一人暮らしをしている安アパート。そこに帰ってきたのは、日付が変わるか変わらないかって時間だった。


 そのまま、ほんの少しでもレポートを進めておこうと思って手を付けだしたら何だか止まんなくなっちゃって。やっとキリが付いてベッドに入ったのは、午前七時を回っていたかも…。


 で、今の時間は午前九時ちょっと過ぎ。二時間も寝てないじゃん…。今日の講義は午後だけなんだから、もう少し寝かせてよ~…。


 しかも、スマホの液晶画面に浮かび上がっている着信相手の名前は…お母さんだし!!


 ちょっと!あたしもう二十歳なんですけど!?成人式出ましたけど!?もう立派な大人なんですけど!?いつまでも子ども扱いしないでほしいんですけど!?


 いったい何の用事でこんな朝から…。頭の中で言ってやりたい文句の数々を思い浮かべながら、あたしは通話パネルをタッチした。


「はい!もしもし!?」

『あ、未知子!?お母さんだけど!』

「お母さんのケータイからかかってきてんだから、これでお母さん以外の知らない人が声出してたら、それはそれでびっくりなんですけど!?」

『そんな事はどうでもいいから!いい?落ち着いて聞きなさいね!?』


 そう言うお母さんの方が、全然落ち着いてない。全く、これっぽっちも。


 どうしたんだろうと思った。普段は能天気だと思えるくらいにのほほんとしていて、慌てるような事が起きる前に、何でもかんでも余裕を持って物事を済ませてしまう性分の人なのに…。


 よく耳を澄ませてみれば、どうやらお母さんは外にいるみたいで、どこか人ごみの中にでもいるのかざわざわと騒いでいる声が遠く聞こえてくる。


 何があったんだろうと思い、素直にその旨を口に出した。


「どうしたの?そっちで何かあったの?」


 お母さんの震える声が返事した。


『未知子の高校の時のクラスに、三崎君って男の子がいたでしょ?ほら、ものすごく頭のよかった三崎彰吾君!』

「ああ…三崎君がどうかしたの?人命救助でもした?」

『逆よ、逆!殺されちゃったのよ!』

「え…?」

『だから!三崎君が殺されちゃったみたいなのよ!!』


 お母さんからの信じられない言葉に、あたしは何のリアクションもできずにしばらく呆然となった。

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