第14話



 あたし達の母校・K県立美里第一高校は、昨今の少子化の煽りをもろに食らっていた結果、落第・留年でもしない限り、在籍中のクラス替えは一切行わない方針だった。


 つまり、すっごく気が合って仲良くなった友達と進級ごとに離れ離れになる心配をしなくていいって事だけど、その反面、すっごく気の合わない奴ともずっとクラスメイトでいなくちゃいけないって事で…。


 他の子達がどうだったかは知らない。でもあたしの場合、その二つの条件が見事なくらいに当てはまってた。


 まずは前者。これは一年生の時にすぐ見つかって、それが後のトップアイドルになる瀬田恭子だ。


 恭子との出会いは、あまりにも自然だった。昇降口に貼り出されてあったクラス分けの名簿表を見ていた時、たまたま隣り合わせに立っていて、二人同時に「あっ、一組だ!」なんて口に出したのが始まりだった。


「え…、そっちもなの?」

「あなたも?じゃあ、三年間一緒なんだ。よろしくね!私、瀬田恭子!」


 そう言って、にこりと微笑んできた恭子の笑顔はとてもきれいだった。


 その日からずっと一緒にいる事が増えてきて、自他共に親友と呼んでも支障のない間柄になってきた。本当、何をするにも一緒で、同じクラスになった島本正樹ってバカから「お前ら、もしかしてレズ?」なんてたまに冷やかされたりもしたけど、そんなの鼻で笑ってやる事で一蹴していた。


 恭子には、欠点みたいなものが何一つ見当たらなかった。


 スタイル、成績、そしてたぶん顔立ちも平均値スレスレを突き進んでいるあたしとは全然違って、恭子は何もかもが群を抜いている。これでほんの少しでも性格に難があったのなら、あたしはすぐに恭子から離れてたかもしれなかったけど、そんな事はこれっぽっちもなくて。


 誰とでも親しくなって、分け隔てなく話ができる恭子はクラス中の憧れであり、人気者だった。


 実際、クラスの男子の何人かは、恭子に恋をしていたと思う。でも、同時に自分とは釣り合わない高嶺の花とも思っていたようで、恭子に告白してくる身の程知らずで度胸のある奴は一人もいなかった(一度、島本のバカが放課後に「一回でいいから恭子とヤリて~!」なんて叫んでたのを見かけたから、思いっきりぶん殴ってやった事はある)。


 そんな高嶺の花と思われている見た目も心もきれいな子と親友でいられたのは、あたしの高校時代の中で一番の自慢!すっごく鼻が高かった。

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