第13話
「今日ね、成人式出たんだよ。朱色のきれいな着物着たんだよね~♪恭子にも見せたかった!」
『本当?私も成人式出たかったんだけど、お仕事が詰まってて…さっき、やっと戻ってこれたところなの』
「え!?ヤダ!じゃあ今、美里にいるの!?」
『うん。で、逢坂君達が同窓会やってるってお母さんから聞いて、さっきまで顔出してたの。きっと、未知子もいるって思ってたんだけど…』
「うっそ~…!」
あたしの後悔は、最大限に膨れ上がった。
そうだよ。成人式には来られなくても、まだ同窓会には一縷の望みっぽいのがあったじゃん。例え、逢坂や島本がただどんちゃん騒ぎしたいっていう子供っぽいものであっても、忙しすぎる恭子にとっては大事な席だったはずじゃん。
それをあたしったら、恭子は来ないだろうって勝手に決めつけて。おまけに、菊池先生の事も言い訳にして…。二年前のあたしが目の前にいたら、たぶん絶対にビンタされるわ。
今度はいつ恭子に会えるチャンスが巡ってくるんだろ。あたしの中で、やっぱり同窓会に行けばよかったという思いがさらに膨れた時だった。
『あの、未知子…』
ふいに耳に届いた恭子の声は、何だかとてもつらそうだった。
いや、ちょっと違うかな。何ていうか…胸につかえているものを何とか吐き出そうとしているみたいっていうか、どことなく苦しそうな?とにかく、いつもとはちょっと様子が違う話し方で、恭子があたしの名前を呼んだ。
「え…何?どうしたの?」
一瞬、あたしが同窓会にいなかった事がそんなに嫌だったのかなって思ったけど、そんなのは自惚れだった。だって、恭子の次の言葉を聞いた時に分かったもん。恭子は、あの頃のまま、ちっとも変わってなかったなぁって。
恭子が言った。
『あのね…。未知子、忘れてないよね?妹尾君の事…』
「え…」
『妹尾君だよ。妹尾 尊君…覚えてるよね?』
妹尾 尊。
その名前を聞いて、あたしのあまり有能でない頭が二年前の記憶を次々と掘り起こしていく。とても鮮明に、かつ確実に。
「うん、覚えてるよ。忘れられっこないじゃん」
何の景色も見えない真っ暗な新幹線の窓に、しかめっ面をしたあたしの姿が映っていた。
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