第62話
学校が休みの日も、都合さえ悪くなければあたし達はよく一緒に出かけてた。
出かけるといっても、こんな田舎町だから楽しい場所なんて全然ない。かといって、お小遣いも限られてる中学生がそう遠くまで行けるものでもない。
そんな時にマキナが見つけたのが、ある一軒の小さな食堂だった。
「わあ!私、こんなお店に入ってみたかったの!」
おしゃれでセンスのいい店先でしか似合わないような事を言って、マキナが何の躊躇もなく入っていった時は本当に驚いて。
食券の自動販売機を前に子供みたいな顔でワクワクと肩を揺らすマキナを見て、つい吹き出しちゃって。
「何よ、マキナ。今日のお昼はここ?」
「うん!ねえ、中華そばにしない?」
「鼻が垂れちゃうから、ヤダ」
「あはは、優子ったら女の子なんだから」
「女の子だし」
二人して笑いながら、自動販売機にお金を入れる。
食券と交換で、やがて出てきた中華そばをマキナはかなり気に入ったみたいで、この食堂も生物部の活動範囲内にすると宣言してた。
マキナが部長の生物部は、マキナがルールブックみたいなものだった。気に入った場所はどこだって部室にして、気に入ったものはとことん楽しむ。
それくらい、マキナはとても無邪気で素直で天真爛漫で。あたしとは真逆っていうか、似てるところがあんまりなくて。
だからこそなのか、あたし達は親友といっても問題ないくらい、仲がよかった。中学を卒業するまでは。
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