第61話

生物部に入ったあたしは、それから授業中以外は大抵マキナと一緒にいた。


 別に、何か変わった事をする訳じゃない。


 他愛ない世間話から、小テストの点数の話とか、ファッション雑誌に載ってる洋服や小物についての話とか…とにかく、思い付く限りのおしゃべりを楽しんでるだけ。


 放課後になれば、例の部室で日が暮れるまでいた。そこでもお菓子やジュースを口にしながら、ひたすらおしゃべりするだけ。


 でも、それがあたしにはものすごく楽しかった。


 よく考えてみたら、この町に来て、こんなにしゃべったり笑ったりした事なんてなかった。自分でも嫌になるくらい、押し黙って仏頂面ばかり。呼吸する事さえ、何だか義務っぽい感じになってきてて。


 それを、マキナがあっという間になかった事にしてくれたっていうか…、ただ向かい合って話をする事がこんなに楽しいものなんだと教えてくれて。


「ねえ優子、これ見て。今日はこのメーカーの新しいお菓子見つけてきたの。抹茶&チーズのコラボ味だって」


 新発売や期間限定というものが好きらしいマキナは、毎週何かしらの新作お菓子を見つけては部室に持ってきた。その品評会も、生物部の活動内容な訳で。


「…ダメだよ、マキナ。これ、超ビミョー」

「あはは、そうだったね」


お菓子がハズレの時も、楽しかった。

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