第54話
「だって、今あんた生物部って」
「うん。名前はそうだけど、ちょっと意味は違うよ。使う部室だって、南校舎の空き教室だし」
「は?」
「いいから、ちょっとだけ覗いてよ。これ運ぶついででいいから」
マキナはそのか細い両腕に抱えていた勧誘用のチラシを半分あたしに押し付け、南校舎へと続く廊下を先に歩いていく。
片腕一杯に持たされたチラシをどうしようもなく、あたしは足元に転がっていた靴を下駄箱に何とか戻して、マキナの後をついていくしかなかった。
「はい、ここだよ」
南校舎は、かつて全校生徒の数が今の二倍近くいた時に使われていたようだけど、少子化を嘆かれる今のご時世では必要性があまりないのか、図書室と科学室以外の使用頻度が極端に減ったようで。
マキナが先に立って案内された空き教室は、もうどんだけ人の出入りもなくて掃除すらしてないのか、かなり埃っぽい上に、天井にはうっすらクモの巣まで張ってた。
「ちょっ…ここが部室?」
「うん。掃除をちゃんとするなら、好きに使っていいって」
埃を被っている教壇に大量のチラシを置いて、さてどこから始めようかなとブツブツ言ってるマキナ。ちょっと、待ってよ。
「ねえ、ちょっとあんた」
あたしは言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます