第41話
「今、確認できました。あなたが言ってるのは、大窪武夫さんでしょ?あのバス事故の数日前に、火事で意識不明の重体になってる方…」
「意識不明の重体じゃと!?じゃあ、大窪さんはまだ」
「はい、辛うじてまだ生きてますね~」
間延びするように答えた死神の言葉に、自分はあまりにも大きな幸運に打ち震えた。
衝動的にバスに乗り込み、あの町から逃げ出してしまった。I県に戻ったところで、かつての家はもうとっくになくなってるというのに、いったいどうするつもりだったのか。
いや、おそらくは何も考えてやしなかった。きっと空っぽだった。あの町から離れられるのならば、何でもよかったのだろう。
その根っこには、もう大窪さんとは会えないだろうという予感めいた覚悟があった。自分が突き放してしまった為に、大窪さんは独りであんな目に…。
だが、これでもう何の心配もいらなくなった。
大窪さんはまだ生きている。だったら、自分の命と引き換えに助けてもらえればいい。奇跡の生還の譲渡だ、差し引きプラスマイナスゼロだ。対象となる人間が違うだけで、そもそもそれに何の問題がある。
自分は大きく息を吸い込んで、改めて死神を見た。
今の自分の考えを話すのだ。自分より、大窪さんを。そう思いながら口を開いたのだが、また優子がでしゃばってきた。
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