第28話



 二日後の昼前。自分は普段着のままで家を出て、堤防まで出かけた。


 近頃は、堤防のジョギングコースで待ち合わせをし、そのままウォーキングを始めるといった体だったので、ジャージでやってこなかった自分を、先に来ていた大窪さんは怪訝な顔で見つめてきた。


「今井さん、どうされたのですかな?あ、もしかしてどこかお身体の具合でも…?」


 自分を気遣ってくれる大窪さんの優しい言葉に、罪悪感が湧いてくる。おかしなものだ。美代子さんと話していた時は、これっぽっちも感じなかったというのに。


 自分は、家を出た時からずっと噛み締め続けていた唇を開いて、昨夜から用意していた言葉をゆっくりと紡いだ。


「大窪さん…申し訳ないんだが、ワシはもう、あなたとはご一緒できなくなると思います」

「は…?」


 大窪さんの顔が、さらに怪訝そうに歪んだ。


 当然だと思う、突然こんな事を言われれば。自分だって、そうだった。正直、美代子さんから聞かされた事など今でも信じられない。


 だから、確かめるのならば今しかない。それでもし違っていれば、誠心誠意を込めて謝ろう。


 そう思いながら、自分は次の言葉をおそるおそる口にした。

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