第27話
「お義父さんに、何が分かるんですかっ…!」
「何だって?」
「私は正治さんと一緒になるまで、恵まれた生活環境を得られず、いろんな事をあきらめてきたんです。正太や奈緒美には、そんな苦労を味わってほしくない。そう思っちゃいけないんですか!?」
「そんな訳ない。ただ、ワシは美代子さんのエゴをあの子達に押し付けてはならんと…」
「エゴ?常識と分別の間違いでしょう?あんな人と付き合ってるから、お義父さんもそれが分からなくなっちゃったんですか?」
「あの人?」
「大窪さんですよ。お義父さん、あの人とお昼を食べたり運動したりって…何かと一緒にいるようじゃないですか」
何故、ここで大窪さんの話になる?急な事に、自分は頭の中でうまく処理できずに首をかしげた。
そんな自分を、美代子さんはどこか蔑むような視線をよこしてきた。
「今後一切、大窪さんとは付き合わないで下さい。ご近所の目もありますし、正太を可愛いと思って下さるなら、なおさら」
「何故だ!?大窪さんはワシの友人だ。この町に来て、良くしてくれるいい人なんだ。なのに」
「それは、お義父さんが何も知らないからです。大窪さんの事を何にも…」
美代子さんが、ふうと呆れたような溜め息を吐く。
彼女に対して、初めて腹が立った。大窪さんのおかげで、どれだけ自分の世界が広がったか知れないというのに、この町で唯一の友人を悪く言われたせいで、息子の妻だという事実を忘れて怒りが込み上がる。
だが、それはほんの数秒間だけだった。美代子さんの次の言葉が来る、ほんの数秒間だけ…。
「今後の為にも言っておきますね。いい人そうに見えるでしょうけど、実は大窪さんは…」
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