第18話
†
「…あの、これは?」
大窪さんと一緒に昼飯をとるようになって、何回目かになる日の事だ。
大窪さんは自分の目の前に立つなり、はい、と言って持っていた紙袋を自分に差し出してきた。その中に、彼が着ているものと同じ柄のユニフォームと短パンがちらりと見えた。
「今井さんにあげます。私の使い古しで申し訳ないんですが」
「いやいやいや、そういう事ではなくて」
自分は慌てて両の手のひらを振る。決して、大窪さんのお古を手に取るのが嫌だと言うのではない。なぜ、彼がそれを自分にくれようとしているのかを理解できないのだ。
それを察した様子で、大窪さんが言った。
「いい機会ですので、今井さんをお誘いしようと思って」
「え、何にですか?」
「何って、決まってるでしょう。ジョギングです」
と、大窪さんは紙袋を自分の両腕に押し付ける。自分は無理ですと言いながら、今度は首をめいっぱい横に振った。
まともな運動など、学生時代の体育の授業以来やってないような気がする。正治が子供の頃は何度か運動会の親子競技にも出たが、ダントツでビリになった挙げ句、二人三脚の時など二人で盛大に転んで失笑を買った苦い経験もある。
そんな自分がジョギングなんてと断るつもりだったが、大窪さんは受け入れなかった。
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