第6話



「え~~~~!?いやいやいや、ちょっと困りますよ皆さん!皆さんはまだ死ぬ予定じゃないんです!選挙じゃあるまいし、そんな自由に立候補されても死ねませんって!」


 先ほど「構わない、このまま死ぬ」といった旨を話したら、この死神とやらはやたら慌てふためいて自分や他の者達の周りをぐるぐると駆け回り出した。


 ひい、ふう、みい…自分の他にいるのは、四人か。どう見ても自分より若い者ばかり。ん?子供までいるじゃないか、けしからんな。


「当然じゃないのか?」


 だんだんと、事故の事が思い出せてきた。


 この死神とやらの言う通りだ。自分はI県へと向かう長距離バスに一人乗り込んだ。


 窓際の席に座った自分は、そのままずっと窓の外をぼんやりと見ていたんだった。


 そうして小一時間ほどが経った頃、急にバスがひどい蛇行をし始めて、それから…。


「あれだけの高さから落ちたんだ。少なくとも、この中で一番年寄りのワシは確実に死ねると思うが?」


 自分がそう言えば、死神は力いっぱい首を横に振った。


「いいえ、いいえ!今井謙造さん、あなたはまだ死にませんよ。あと二十年くらいは寿命が残ってますから!」


 それを聞いた周囲の者の視線が、一気にこちらに注がれる。


「ヒュ~!しぶといな、じいさ~ん」


 その中にいた、中学生くらいの小僧が軽口を叩いてくる。だが、そんなものは一切無視して、自分は死神に詰め寄った。


「まだ二十年生きるだと!?冗談じゃない、今すぐ死なせろ!ワシは絶対に死なねばならんのだ!一刻も早く!さあ、ワシを早くあの世に連れていけ!」


 バスに乗っていた時はどうしたものかと考えていたが、滅多にない機会を得られた。


 自分は死ななければならないのだ、絶対に。

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