第114話

「…今日のLHRで、この先どうすればいいんだろうなって俺から話し出したんだ。誰も『やめろ』なんて言わないもんだから、あれもこれもってどんどん話が進んで…最終的に、どうすれば安西と佐野がクラスに戻ってきて、昔みたいに楽しくやれるんだろうなって」

「昔みたいに…?」

「うん、例えば…そうそう、一年の時の水泳大会。あん時は、楽しかったよな」


 宏樹が私の方を向いて、少し遠い目をしてみせる。そのせいで、たぶん宏樹が思い出しているのと同じようなものであろう風景が私の頭の中にも広がっていく。


 田舎町のど真ん中にあって、おまけに生徒数も少ないうちの高校にはクラス替えなんてものは存在しない。選択別科目の授業の時だけ各々が指定された教室に出向くくらいで、基本的に入学した時に決まったクラスで三年間、同じ顔ぶれで過ごす。


 だからこそなのか、何かしらの行事があれば、どのクラスもすごく張り切って参加してたし、私達もそうだったような気がする。


 そして、宏樹が言った通り、一年の時の水泳大会。あれは本当に楽しかった。


 別に何かしら商品をもらえる訳でもないし、決められた距離と泳法で泳いでいって順位を争うという単純な事をひたすら繰り返すだけの大会なのに、クラスの誰もがプールサイドから大声を張り上げて、自分達の仲間を応援していた。


 私もそうだった。私は背泳ぎが一番得意だったから、確か背泳ぎの五十メートル泳に出たんじゃなかったっけ…。

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