第107話
宏樹が六着でゴールした時、私の胸の中はますます罪悪感でいっぱいになった。
私を庇おうとしなきゃ…いや、そんな事より私が『それ』を始めたりしなければ、宏樹にとってもっと満足できる結果に終わっていたのかもしれないのに。
なのに、もう誰も私を責めようとしない。つい、ちょっと前まで、皆で私に『それ』をし返していたのに、今では誰も私を責めてくれない。
皆が皆、力の限りに精一杯走り切った宏樹へ温かい拍手を送るばかりで、私は前よりももっと置いていかれたような気分になった。
「何でよ…」
いつの間にか、私の口は勝手にブツブツと呟き始めていた。
「全部、私が悪いんじゃないの?蒔絵が学校に来なくなったのも、クラスの雰囲気が最悪なのも、前嶋がビリになったのも…」
「理香?どうしたの?」
あいつが怪訝な声色で私に問いかけてくる。それでも、私のブツブツ呟く言葉は止まらなかった。
「何よ、もっと責めればいいじゃん。罵(ののし)ればいいじゃん…何でよ、やめないでよ。本当に透明人間っぽくなっちゃう…」
「理香?理香、僕の声をちゃんと聞いてる!?」
「マジで困るんだから、そんなの。私、ここにいるんだから。だから、もう…」
「理香っ!!」
大声で名前を呼ばれた直後、私の頭にぼすっと柔らかくて大きな何かがぶつかってくる。
ほんのちょっとの間だけ呆けた後、足元の床に落ちていったそれを見下ろす。真っ白い枕だった。
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