第88話



 それから、三日後。


 私は、五時限目のチャイムが鳴り始めると同時に、校門の外へと飛び出していた。


 昼休みの後で始まるこの時間は、クラスで行われるLHR(ロングホームルームの略)だ。おそらく、後藤は宣言通りに行動を起こす。二年A組の中で何があったのか、自分が納得いくまで皆に聞き続けるつもりだろう。


 バカバカしい、そう思った。


 きっと、クラス中の誰もが私を指差して、「全部こいつが悪いんです」なんて口々に言ってくる。ついでに、蒔絵が学校に来なくなった理由も私だけのせいにするんだろう。


 ふざけんな、自分の事を棚に上げて。あんた達だって、楽しんでたじゃん。いつも私の言いなりになって、一緒についてきて、思いっきり満喫してたじゃん。それなのに、それなのに…。


 冗談じゃない。どうして私だけが、こんな…!


 そんな思いばかりが、だんだん頭の中を占めてきて、不安が一気に加速し始める。私は歩きながら、自分の左腕をじっと見つめた。


 長袖の下に隠れている包帯がうっとうしい。こんなもの、いらない。早く、早くしないと…。


 どうしてこんな時に限って、いつものカッターナイフを自分の部屋の机の上に置き忘れてきてしまったのか。代わりになる物すら持ち合わせていない自分に腹が立った時だった。

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