第51話
翌朝。
前と同じように、あまり眠れなかった。憂鬱な気分で朝日が昇っていくのを見ながら制服に着替え、お母さんがいるであろう居間に向かう。今日は早めの出勤なのか、もうお父さんはいなかった。
お母さんは何度も「左腕はどう?まだ痛い?」と繰り返し聞いてきた。
お願いだから、ほっといてほしかった。今の私には、これしか自分自身を確認する方法がないんだ。
でないと、今にも『それ』の中に埋もれて本当に消えちゃいそうになる。そんなのはたまらなく不安で嫌だから、切る。安心したいから、切るんだ。
私だけが知っていればいい解決方法を知らないお母さんは、朝ごはんを食べる私をずっと心配そうに見つめていた。うっとうしかったから、同じくらいずっと無視していたけど。
朝ごはんを済ませて、全部の身支度を終えた頃だった。ふいに、家の玄関先にあるチャイムが二回ほど鳴った。
「あら。こんなに朝早く、誰かしら」
足早にお母さんが廊下に出ていく。私も学生鞄を持ち、少し遅れて後に続いた。
私が廊下に出ると、ちょうどお母さんが玄関の引き戸をカラカラと開けているところで…その向こうには、前嶋宏樹が立っていた。
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