第45話

翌朝に出された病院からの朝食は、あんまりおいしくなかったから半分以上残した。


 それを見た担当の看護師が何か言おうとしていたけど、私がじろりと睨んでやったら、「仕方ないわよね…」と小さく呟きながらトレイを片付けていった。


 そんな事でもイラついて、ウザくてしょうがなくて、私は診察をサボって病院の屋上に出た。


 田舎町の小規模な総合病院は五階建てしかない。エレベーターがない代わりに階段の段数は少なかったから、屋上に出るのはあっという間だった。


 縁には金網フェンスもなく、シーツなどを干すのに使うんだろう、古びて錆(さび)が付き始めた洗濯竿が何本か佇んでいるだけのつまらない屋上。


 そこから見えるのは、ここ以上につまらない田舎の風景。


 おしゃれなビルや店なんか一つもなく、どれもこれも同じに見える民家が並んでいるだけ。


 後は、この田舎町に住んでる誰もがそう呼んでる双子山。飽きもせず、毎年同じようにその見映えを変えていく二つの山は、今は深緑一色だ。


 それさえもつまらないと思いながら、私は屋上の縁にゆっくりと進んでいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る