第43話

そうっと視線を左腕に向ける。


 半袖の入院着に着替えさせられている私の左腕には、真っ白な包帯がしっかりと巻かれていた。


 手首の辺りは、包帯の下にガーゼが何枚も添えられていて念入りだったが、そのガーゼに吸い込まれたわずかな赤色が見えた時、全部思い出す事ができた。


 ああ、そうか。調子に乗って、やりすぎちゃったんだ…。


 そして今、自分の身体が清潔なベッドの上に寝転がっている事から、多分ここは町から少し離れた所にある総合病院の病室なのだろうというのも想像できた。


「さっきね、お父さんにも連絡したの。もう少ししたら来ると思うけど…」


 私が目を覚ましてホッとしたのか、お母さんのしゃべる口が止まらなくなっている。


 勝手に勘違いしているお母さんがウザかったけど、ここで『それ』のターゲットにされてるなんて話すともっと面倒臭くなりそうだったから、三十分くらい後になってお父さんが医者と一緒に病室に入ってきても、私はずっとだんまりを決め込んでいた。


「もしかしたら、少々傷跡が残るかもしれません」


 お父さんやお母さんとそう年が変わらなそうな医者がちらちらと私を見ながら、声のトーンを落としてそう言った。気にしなくていいのに。私自身、気にしてないんだから。

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