第38話
それから少しして、私はカッターナイフを学生鞄に入れて持ち運ぶようになった。
女の子達への反撃に使おうと思っての事じゃない。そんな事したら犯罪だし、あの子達にそこまでしてやる価値はない。
主な使用用途は『それ』の後でやる確認作業の為。
私はここにいる。
カッターナイフは、決して見えてない訳でも声が聞こえてない訳でもないという事を確認する為の道具なんだ。
何度かやっているうちに、すっかり慣れてきた。いや、むしろ切らないと安心できなくなっている。
切り傷が増える度に、不安がどんどん消えるんだ。すうっと流れてくる血を見ていると、すごく安心できるんだ。私はここにいる、生きてる人間なんだって…。
今日の『それ』は、放課後にやられた。
学校の近くの公園まで連れていかれて、誰もいない事を確認した女の子達に頭の上から砂場の砂を思い切りかけられた。
目や鼻や口に、たくさんの砂が入る。それを見て、女の子達は笑っている。やめなさいよと言ってるのに、完全に無視される。どんどん不安になっていった。
しばらくして、『それ』に飽きたのか女の子達は私を置いて帰っていった。今だ、早く確認しないと。私がふらふらと砂場から立ち上がった時だった。
「…大丈夫か!?」
聞き覚えのある声に、反射的に顔を上げてみれば、そこには同じクラスの前嶋宏樹が立っていた。
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