第32話

蒔絵が学校に来なくなって、十日くらいが過ぎた頃だった。


 いつものように朝、学校に行って教室に入る。そして、一番最初に目が合った女の子に挨拶した。


「おっはよ♪」

「……」


 その子は、返事をしなかった。


 まるで、親の仇でも見るかのような目で私をじろりと睨むと、次の瞬間にはふいっと顔を逸らして自分の席に着いてしまう。


 …何、こいつ。ムカつく、すごくムカつく!


 今日のターゲットはこの子に決定!そう思いながら、教室の真ん中で集まってる他の子達に声をかけようと近付いた。


「おはよう、皆♪ねえねえ、今日はさあ…」

「…ん?今、何か聞こえたぁ?」

「え~、何にも聞こえないよぉ?」


 あれ、と思った。


 だって皆、私の方を振り向こうとしない。私の声、聞こえているはずなのに、誰も聞こうとしてくれない。


 それに、皆の言葉も気になった。だって、これって『それ』が始まる合図のようなもので…ターゲットを攻撃している時の定番の言葉だもん。


 何で?どうして?


 訳が分からず立ち尽くしていると、後ろの方でヒュウッと口笛が鳴った。


 思わず振り返ってみると、そこには数人の男子がいて、私をニヤニヤ笑いながら見つめていて…そのうちの一人が言った。

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