第31話

「何で…何で、こんな事するの!?私が何したっていうの…お願い、もうやめて。助けてよぉ!!」


 普段は自分から話し出す事のない蒔絵のその叫びに、皆ひどく驚いたようで、びくっと肩が揺れた子もいた。


 でも、私はそんな蒔絵に何にも感じなかった。いや、もっともっとと思ってしまった。


「…何でって?決まってるじゃない」


 座り込んでいる蒔絵を見下ろしながら、言ってやった。


「だって、こうした方が面白いじゃん」


 大きく見開かれた蒔絵の目から、涙がすうっと流れてた。これも、とても面白かった。






 それから蒔絵を『それ』のターゲットにする日が続いていたけど、ある日を境に蒔絵は学校に来なくなった。


 最初は風邪で休みだと後藤が言ってたけど、その次の日にはインフルエンザだったと言い直した。


 だが、治る頃だろう一週間が過ぎても蒔絵は来ない。後藤も次の理由を言おうとしなかった。


 私は苛立っていた。蒔絵をターゲットにするのが一番楽しかったから、その蒔絵が来ないんじゃ、つまらなくてしょうがない。面白くない。


 仕方ないから、また以前のように「今日はあの子」「今度はこの子」と毎日ターゲットを変えていく生活に戻った。

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