第二章 -十七歳-
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第29話
…『それ』を始める事に、最初から大した理由も意味もなかった。
強いて言うならば、ちょっとムカついたから。何、あの子。ウザいんですけど。そう思ったから。
そして、その相手は誰でもよかった。
いつものように朝、学校に行って教室に入る。その時、ちょっと私が、
「何、今日のあの子。ムカつく」
そう一言呟けば、あっという間に『それ』が始まる。何かの電源のボタンを入れるくらい、とても簡単に。
今日のターゲットが決まったら、私を中心に皆でそいつを攻撃した。そいつがさもいないかのように振舞って無視したり、持ち物を隠したり壊したりした。
たまに抵抗される事はあったけど、しょせん相手は一人でこっちは複数。皆で取り囲んで、
「何か文句あるの?あんたが悪いんじゃん」
そう言ってやれば、そいつは大人しくなるか、泣きベソをかき始めるしかなくなる。
そういう反応を見るのが、一番楽しかった。理由も意味もなかったけど、ひたすら愉快で仕方なかった。
そのせいだろうか、クラスの女子達は、私のご機嫌を取るのに必死になってた。明日、『それ』のターゲットにされるまいと毎日頑張って私をもてはやす。
何だか、お姫様になったような気がして、私はますます『それ』に夢中になった。
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