第28話

全く間取りは変わっていないはずなのに、七年ぶりに中に入るとなると、母校だというのにどこがどうだったのかと迷いそうになる。


 そんな中、年に何回かのペースでこの田舎町に帰ってきている宏樹は、一切の迷いもなくすたすたと廊下を歩き、階段を見つけて進んでいく。私は宏樹についていくだけだった。


 やがて三階まで昇り、折れた廊下を左に進んでいけば、目当ての教室が見えてきた。


 やはり、七年前と同じでその教室にかかっているプレートには『二年A組』と書かれてある。


 まだ日差しも高くて空気中の熱気がすごいのに、また背筋に冷たいものが走った。同時に、左腕がじんじんと痺れていくような気がしてならない…。


 歩みを止めて廊下に立ち尽くしてしまった私に気付いて、宏樹が振り返りながら言った。


「…そこで待ってるか?」

「え…」

「あいつと少し話したら、すぐに出てくるから」


 宏樹の目の前には、二年A組の教室の引き戸がある。それに手をかけ、宏樹はゆっくりと開けていく。閉ざされていた空間が、一気に広がっていくように思えた。


「待って!」


 思わず、私は大声を出していた。


「一緒に入るから」

「大丈夫か?」

「それは分からないけど…」


 開かれた引き戸の前に立つ宏樹の横に並んだ。すると、すぐ目の前にあの頃と変わらない教室の景色が広がっていた。

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