第27話

「そういえば、今年が七回忌になるのか。だからお前達…」


 私と宏樹を交互に見て、後藤先生は二度ほど頷く。それを見て、宏樹が言った。


「五時半から、円行寺で法要があるんです。よろしければ、後藤先生も」

「いいのか?担任だったくせに、俺はあいつに何もしてやれなかったんだぞ?」

「それは俺も同じですし、そんな事であいつは拗ねたりしませんよ。むしろ、理香や後藤先生が来ない方が厄介です」

「そうだな」


 後藤先生が私を見た。どこか懐かしむような、それでいて少し悲しそうな目で。


「安西」


 後藤先生が言った。


「よく、勇気を出してくれた。今まで頑張ったな」

「いえ…」


 首を横に何度も振ってから、私は校舎を見上げた。


 太陽の光に照らされた窓ガラスが、チカチカと反射してきらめいているように見えた。その窓ガラスを下から数えて三つ目の階に、七年前の私と宏樹と蒔絵、そしてあいつの教室がある。


「…私達の教室に、入ってもいいですか?」


 私がそう言うと、後藤先生は一度唾を飲み込んでから「無理はするなよ?」と言ってくれた。

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