第23話

翌日の昼過ぎになってから、私と宏樹は家を出た。


 二人並んで、北の方角へとまっすぐ歩く。高校に行った後、そのまま円行寺に向かうつもりでいるから、二人とも喪服姿だった。


 暑い午後の日差しの中を、私達は肩を並べて歩き続けた。まるで、あの頃のようだ。自分達を取り巻く全てがごくごく当たり前の事であり、それらが決して敵に回るはずがないと高を括って、何の恩恵も感じていなかった、あの頃と。


 私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれている宏樹の首筋に、うっすらと汗の筋が通っていた。セカンドバッグからハンカチを取り出してそのまま無言で差し出すと、宏樹がわずかな苦笑を浮かべながら「サンキュ」と受け取った。


 十五分ほど歩いた先に、私達が通っていた高校が見えた。七年ぶりに見る校舎はやはりあの頃と変わりなく田舎らしい小ぢんまりとした造りだったが、何故か今の私の目には大きく映った。


 校門をゆっくり通り抜けると、そこから右側の方にあるグラウンドからいくつもの掛け声が聞こえてきた。


「よーし!次は50mダッシュ十本行くぞ!」

「うっす!お願いしまッス!」

「お願いしまッス!」


 その中から聞き覚えのある掛け声を拾った宏樹が少し目を細めてそちらを見やる。私も、宏樹の視線の先を追いかけた。

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