第22話

蒔絵が高校を辞めて、この町からも出て行ってしまったのは、あいつがいなくなる一ヶ月くらい前の事だ。


 そんな事になってようやく私は、蒔絵に対してひどい事をしてしまっていたと自覚した。それを教えてくれたのは誰でもないあいつだったのに、あいつはその頃にはもうベッドから起き上がる事もできなくなっていて…それでも、ずっと私の為に笑っていてくれた。


『大丈夫だよ。君とその子が生きてさえいれば、いつかどこかでまた会える。その時、今の君の気持ちを言えばいいよ。僕はその日が来るって信じてる。何なら、その日が来るのを一緒に待っててあげるよ』


 そう言っていたのに、笑って励ましてくれてたくせに、嘘つき。分かってたくせに、嘘つき…。


「明日の七回忌、何時からだったっけ?」


 宏樹がそう尋ねてきたので、私は慌てて居間の隅に置いていたハンドバッグから、優衣さんの手紙を取り出した。それに書かれている事項を簡単に読み上げる。


「午後五時半から、円行寺(えんぎょうじ)で」

「…だったら、少し時間あるな」


 宏樹が言った。


「理香。明日、俺達の高校に行こう。七回忌の前に、あいつに会いに行こう」

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