第18話
「お母さん、ただいま~!」
どこかに遊びに行ってきた帰りなのだろうか。小学一、二年生くらいの背の低い男の子が、顔中を砂まみれにしてこちらの方に走ってくる。そして、私の背後から母親のものらしき女の人の声が聞こえてきた。
「お帰り~!今日も楽しかった?」
その女の人の声に、私の身体は一気に強張った。あいつの次に忘れられない、聞き覚えのある声だったから…!
「お母さ~ん!」
男の子は私の横を通り過ぎ、後ろにいるであろう母親の腕の中に向かって飛び付いた。それをしっかり受け止めたのか、母親の楽しそうな笑い声が聞こえる。男の子の嬉しそうな声も重なっていた。
「ねえ、お母さん。今日の夜ごはんは何?」
「カレーにしちゃおっかなぁ~」
「ニンジン入れないでよ?」
「ダ~メ!ニンジンさんには栄養たっぷりなんだから。お母さん、大好きだからいっぱい入れちゃう~」
…嘘つき。あんた、ニンジン大嫌いだったじゃん。見るのも嫌だって言ってたくせに…。
背後の楽しそうな声が遠ざかっていく。行かないで。そう思った瞬間、私は振り返って大声を出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます