第12話
「痛むのか!?」
「うん…でも平気、ちょっとだけだから。昔に比べたら、全然」
「やっぱり俺は反対だ。どうしてもって言うなら、俺が理香の代わりに行く」
宏樹の腕がすっと伸びてきて、私の肩に触れる。大きくてごつごつとした手…七年前から、こうやって私を支えてきてくれた。あいつと一緒に。
「ごめん、この前は偉そうな事を言った」
ふいに、声の大きさを落として宏樹がそう言ってきたので、今度は私が顔を上げる番になった。
見てみれば、宏樹は痛みに耐えるような顔をしていて、触れている私の肩を少しだけ強く掴んでくる。まるで、やっと母親に会えた迷子のような感じだった。
「宏樹?」
「理香から、あの頃とあいつを引き離すのは難しい事だって分かっているのに…俺はいつもお前に」
「気にしないで、私の問題なんだから」
宏樹に全部言わせたくなくて、私は彼の言葉を遮る。そのまま気まずい空気が流れる前に、先ほどのウエイトレスがコーヒーを二つ運んできてくれたので、少しだけほっとした。
ミルクも砂糖も入れないで、まず一口飲む。深い苦みが口の中で広がり、そのおかげで次に言うべき言葉がすらりと出て行ってくれた。
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