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第11話
「俺は反対だ」
三連休の一日目となった、土曜日の昼。
私は宏樹を近所の喫茶店に呼び出して、日曜と月曜の二日間を利用して実家に帰る旨を伝えた。
昔から時間をきっちりと守る性分だった宏樹は、待ち合わせた午前十一時ちょうどに喫茶店の前まで来てくれた。そして、ウエイトレスが二人分のコーヒーのオーダーを取って店の奥に下がって行ったタイミングでそう告げた途端、テーブル席の向かいに座っていた宏樹は少し大きな声を出したのだ。
「優衣ちゃんにしつこく言われて、つい教えてしまったけど…やっぱり失敗だったな」
宏樹は眉間にシワを寄せてから、窓の外に視線を向ける。苛立った顔を私に見せまいとしているのか、それともそんな自分の気持ちを懸命に抑えようとしているのかは分からなかったけど…。
「理香。お前の前向きな気持ちを折るよう事を言うがな」
顔を背けたまま、宏樹が言った。
「あの町に帰ったって、お前には何一ついい事はない。皆、まだあの頃を覚えてるんだ。そんな所に帰ったって…」
「うん、そうだろうね。まだ、七年しか経ってないんだもん」
いつの間にか、左腕が小刻みに震え出していた。慌てて左腕を右手で掴み、テーブルの下に隠すように引っ張りこむ。
だが、すぐ目の前にいる直樹に隠せる訳がなく、彼ははっとした表情で私の顔を覗き込んできた。
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