第9話
『拝啓 安西理香様
突然のお手紙、どうぞお許し下さい。そして、大変ご無沙汰しています。奥寺優衣です。
早いもので、兄・遼一(りょういち)が亡くなって、今年で七回忌を迎える事となりました。そこで、今回こそは理香さんに兄を弔ってもらおうと思い、こうして筆を取りました。
この手紙を送るにあたって、理香さんのご実家や前嶋宏樹(まえじまひろき)さんに、あなたの住所を教えてほしいと何度もお願いにあがってしまいました。最初はやめておいた方がいいと諭されましたが、譲る事を知らない子供のままで、今とても困惑されていると思います。本当にごめんなさい。
できる事なら、兄の墓前にて直接謝りたいと思っています。あの頃、私はまだ本当に子供で…あなたや兄の気持ちを何一つ思い図る事ができず、あなたに対して冷たい態度を取ってばかりでした。
先日、兄の七回忌の準備をしている時、偶然にも兄が書き遺していた日記を見つけました。途中まで読んでしまったのですが、理香さんにも読んでもらいたいと思っています。
あなたがこちらに戻ってくる事は、並大抵の事ではないかもしれません。辛い思い出を掘り返させてしまうかもしれません。
ですが、もう重荷を下ろしていい頃だと思うんです。兄の為にも、何より理香さん自身の為にも、どうか…。
別紙に七回忌に関する要項を記しておきます。お待ちしています。敬具』
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