第7話

男の子達は、本当に楽しそうに笑っている。これからもずっと続いていくであろう自分達の未来を、全く疑う事なく。


 彼らの姿に、ふとあいつの笑顔を重ねてみた。自分の事より、いつも私や宏樹の事を優先しようとしてきた、あの優しい笑顔を。


 何が違っていたんだろう、と思う。


 あいつにだって、続いていく未来が用意されていてもおかしくないはずなのに。私や宏樹と一緒にいる人生があったはずなのに。


 それなのに、私と宏樹はどんどん年を取っていく。あいつと引き離されていく。あいつだけが、十七歳のままだ。


「何か、ズルいよ…」


 私の呟きは、ホームに滑り込んできた電車の音にかき消されていった。




 住宅街の片隅にひっそりと建っているような五階建ての小さなマンションの一室が、今の私の住まいだ。


 高校を卒業したと同時に、実家を出た。隣県の小さな田舎町で、そこから逃げるように出てきて以来、もう七年も帰ってない。


 いや、帰れないと言った方が正しいのかもしれない。あの町に私がいる事自体が許されないと思う。あいつの事も含めて、全部、全部…。


 まだ日は高かったが、かといって、どこかに出かける気が起きない。一瞬だけ宏樹の顔が頭に浮かんだが、さっきの今で、とても連絡する気分にもなれなかった。

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