第4話



「ねえ、今日合コンするんだけど来ない?」

「ええ、マジ!?向こうのメンツはどんな感じ?」

「大東産業の営業部成績トップ3のイケメン揃いでーす♪」

「キャー、上手くいけば玉の輿じゃない。絶対行く行く!」


 昼休みは終わったのに、同僚の子達のテンションは仕事ではなくアフター5の方に向いている。


 いつまでも仕事に戻ろうとせず給湯室で騒いでいる彼女達を見かねて、課長がデスクから「君達いい加減にしなさい!」と声を張り上げた。


「全く…安西(あんざい)君を少しは見習おうと思わないのか」


 ぶつぶつと課長がそんな言葉を呟く。それに無視を決め込んでパソコンのキーボードを叩いていると、ふいに誰かが私の背後にやってきた。


「安西先輩っ、先輩も一緒に合コン行きましょうよぉ~」


 この甲高い声は、確か大倉さんだ。


 椅子を少し引きながら振り返ると、その四年後輩の大倉さんは先ほどの課長の叱責などどこ吹く風といった様子で、ニコニコと無邪気な笑顔のまま話を続けてきた。


「大東産業なんて、超レベル高いじゃないですかぁ。行かなきゃ一生の損ですよぉ?」

「ごめん。私、そういうのは」

「え~!?そんな事言ってたら夏終わっちゃいますよ!一緒に行きましょう~?」


 悪い子ではないと思うが、積極性と強引さをかけ間違える節が随時に見られて、私は彼女が苦手だ。会話はするものの、一定以上踏み込まれると迷惑に近い感情さえ抱く事もあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る