第2話

私は宏樹から顔を逸らして、ハムサンドを食べる作業を再開した。うん、やっぱりおいしい。玉子サンドと悩んだけど、こっちにしておいて良かった。


 一方、宏樹の膝の上に置かれたから揚げ弁当は手つかずのままだ。割り箸も紙袋に包まれたまま、割られてもいない。


 私は一つ目のハムサンドを全て飲み込んでから、宏樹に言った。


「どうしたの?早く食べないと、昼休み終わっちゃうよ」

「理香(りか)。俺の話、聞いてた?」

「うん、ちゃんと聞いてたよ」


 二つ目に手を伸ばし、口に運ぶ。ふわふわの食パンにハムと辛子マヨネーズを少々挟みこんだだけのものが、私の舌をほど良く満足させ、胃の中に流れていく。それに対して自然と笑ってしまう私を、宏樹はまたじっと見つめていた。


 買ってきたハムサンドを全部平らげると、私はベンチから立ち上がった。


 そのままくるりと宏樹を振り返ると、ようやく彼は食事を始めていたが、口の中いっぱいに唐揚げやごはんや付け合わせのおひたしを詰め込んでいるので、私はおかしくなってまた笑った。


「ちょっと宏樹、がっつきすぎ。待ってて、お茶買ってきてあげる」


 公園の入り口の脇に自動販売機が見える。ベンチから二十メートルほどしか離れていない。


 確か宏樹が好きなのはほうじ茶だったっけと思い出しながら、その自動販売機に向かおうとした時だった。

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