第116話

「どこまで行ってたんだ、このバカ!」


 地下のアジトに戻ってすぐ、ナオトに大声でそう詰られ、リュウジは不機嫌な表情を隠そうともしなかった。


 今日はリュウジが買い出しの当番だった。食料に衣類、それからオガに再三言われていた蛍光灯などが入った紙袋を二つ抱えている。


 リュウジはそれをソファの上に投げ出すように置いた後、ナオトを振り返る。すると、ナオトはまた怒鳴った。


「お前っ…その顔のままで出かけてたのか!?」

「帽子を深く被ってたから、誰にもバレてねえよ」

「自分が脱獄犯だって自覚ないのか!何の為に颯太さんから特殊メイク習ったんだよ。ユウヤさんだってやってんだぞ!」

「やたら時間かかって面倒だからよ」


 背中から倒れ込むように、リュウジはソファに腰を下ろした。小さな手鏡を懐から取り出し、自分の顎を片手でゆっくり撫でる。うっとりとしていた。


「それによ」


 リュウジが言った。


「このイケメンをゴムやら樹脂やらの塊で覆うのは人類的損害だろ?」

「寝言はこれを見てから言え」


 ナオトは座っているリュウジの頭上に何枚ものプリントを降らせた。視界がいきなり真っ白になり、リュウジは驚いて両手をバタバタ動かす。その時、プリントの一枚を無意識に掴んだ。

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