第117話

「何だよ、いったい…」


 掴んだプリントを面倒臭そうに見やるリュウジだったが、すぐに「あっ…」と言葉を失った。


 プリント一面にあったのは、リュウジの顔写真だった。下方には谷 隆司の名と年齢、五十万円の褒賞金が出るなどの旨が書かれている。


 そして、一番厄介だったのが一際太い文字で『レッド・ティアーズのメンバーの可能性大!』とあった事だ。


「『委員会』と警察のデータベースに侵入したら、この有り様だったよ。今頃、全国にこのポスターが貼りまくりだ」


 ナオトはリュウジの前に出た。腕組みをして見下ろしてくる。リュウジはそんなナオトをプリント越しに見つめた。


「わざとやってるだろ」


 ナオトが言った。


「お前、前の作戦の時もグラサン付けてなかったよな。わざとだろ」

「だとしたら?」

「ふざけんなよ。今の日本大国で、顔を晒すレジスタンスがどこにいるんだ」

「……」

「何、考えてんだよ」


 返事をしないリュウジに、ナオトは不安を募らせた。彼が何を考えているのか、本当に分からなかったからだ。

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